目指すべきは『東アジアのハブ』か『日本の玄関口』か?

2017年5月31日

大艦巨砲主義とヤマト

『戦略』は正確な状況分析が前提となっている。
「思い込み」で戦略を立てると悲惨な結果を招くことは誰でも分かる。
しかし 『戦略』が失敗するまでは、前提である状況分析が『幻想だ、虚構だ』とは誰も言わないし、誰もそう思わないのだ。


大日本帝国海軍の失敗原因として大艦巨砲主義への固執があげられる。戦艦大和は世界三大無用の長物と言われる。これは現代日本の大型開発や企業の過大設備投資の失敗の比喩としても使われている。たとえばシャープの液晶工場の投資を戦艦大和になぞらえるなどなどである。~中略~ところが、航空戦力の重要性を認識しながら、戦艦大和という世界最大級の大型戦艦が建造されてしまったならば意図と結果が乖離している。意図と行動の乖離は日本軍の体質的な問題点である。
引用元:林田力ブログ

大日本帝国海軍の失敗は、航空戦力の優位が明白になっても「大艦巨砲主義」を捨てきれなかったことにある。日本海海戦におけるバルチック艦隊殲滅の『ノスタルジー』が時代遅れな幻想を存続させる原因となった。シャープの液晶工場は、「世界の亀山工場」の『プライド』が中国、韓国勢などの競合を無視した無謀な投資につながったと言えるでしょう。

『誰も疑わない常識や前提を疑え』

翻って、我が沖縄県の産業戦略は、どのような状況分析・前提のもとに立てられているのだろうか。
『沖縄成長産業戦略 ~アジアゲートウェイとして発展~』(内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 企画振興課)を見ると、

2.沖縄のポテンシャル(「沖縄力」)
(1)「地の利」 ~東アジアの中心~
那覇を中心とする 1,500km 圏内(飛行 4 時間以 内)に東京、ソウル、香港、上海、台北、マニラ 等の主要都市があり、 巨大なアジア市場へのアク セスに地理的優位性がある。
引用:平成26年~28年度分の『沖縄成長産業戦略~アジアゲートウェイとして発展~

沖縄が「巨大なアジア市場へのアクセスに地理的な優位性がある」との前提で、県の産業振興計画が立てられているようです。では、どれだけ地理的優位性があるのか東アジアの各都市と比較してみました。

飛行時間の比較

 

⇒東京

⇒北京

⇒ソウル

⇒上海

⇒台北

⇒香港

那覇(出発)

2時間25分

3 時間 45 分

2 時間 25 分

2 時間 15 分

1 時間 30 分

2 時間 55 分

福岡(出発)

1 時間 40 分

4 時間 20 分
(経由)

1 時間 25 分

2 時間 5 分

2 時間 25 分

3 時間 35 分

ソウル(出発)

2 時間 15 分

2時間5分

0時間0分

2時間5分

2 時間 35 分

3 時間 40 分

上海(出発)

2 時間 55 分

2 時間 15 分

1 時間 55 分

0時間0分

1 時間 50 分

2 時間 40 分

福岡と那覇の比較:
福岡は那覇に比べて、国内の大市場である東京、大阪へのアクセスで圧倒的に有利な位置になる。また、上海、ソウルへのアクセスも那覇より近い。ただ、台北、香港などの南方の都市へのアクセスでは那覇のほうが近くなっている。

ソウルと那覇の比較:
ソウルは、東京、大阪、ソウル、北京、上海と東アジアの大都市の全てで那覇よりも圧倒的に近い。上海よりも北の東アジア各都市に限定するなら、ソウルこそがアクセス面でのハブ都市であると言える。

上海と那覇との比較:
上海は那覇と比べて、東京へは那覇よりも30分多くかかるが、北京、ソウル、上海へは圧倒的に近い。また、台北、香港へのアクセスでは那覇と同等となっており、上海自体が巨大な市場であると同時に、アジア各都市へのアクセスは那覇よりも優位性がある。

東アジア各都市圏の市場規模(2012年現在)

 

東京

ソウル

大阪・神戸

上海

北京

香港

世界の順位

1位

4位

7位

8位

11位

16位

GDP(市場規模)

1兆6,167億ドル

8,459億ドル

6,548億ドル

5,065億ドル

5,061億ドル

4,160億ドル

人口

3,700万人

2,462万人

1,869万人

2,468万人

2,163万人

726万人

●東アジアのハブとなるためには、当然、都市の市場規模も重要なファクターだ。そうすると、日本市場を重視した場合には東京、中国市場を重視した場合には上海がハブとなる。 上海は東アジア各都市へのアクセスでも地理的な優位性があり、総合的に見た場合、上海は東アジアのハブとしての条件を満たしている。

少数の人が戦略を立案し、メディアが『幻想』を広める

「那覇を中心とする 1,500km 圏内に東アジアの主要都市があり、 ハブ都市となる地理的優位性がある。」

沖縄県在住の方は、上記の文言を琉球新報や沖縄タイムスで一度は目にしたことがあるのではないだろうか。私も、浦添市の友人が熱っぽく語る『ハブ都市としての可能性』に「すごい!」と興奮したことを覚えています。

東アジアのハブ都市としての競合都市は国内の都市だけではない、競合となる東アジアの各都市にも目を向けなければならない。考えてみれば当たり前のことだ。なぜ、このような『幻想』が信じられているのだろうか。

答えは『琉球王国の歴史』にあると思います。日本海海戦の大勝利が生んだ「大艦巨砲主義」や“世界の亀山工場”のプライドによる「過大な液晶工場への投資」と同じく、中継貿易で栄えた琉球王国の歴史によるノスタルジーが「東アジアのハブ」という『幻想』を信じるもとになったのではないでしょうか。

そこで、内閣府沖縄総合事務局(098-866-1727)に戦略立案の流れを聞いてみました。
●沖縄の産業戦略策定の原案作成:先ず、内閣府沖縄総合事務局と沖縄県の担当部署(たぶん商工労働部)との話し合いで原案が策定される。
●原案をもとに、大学の学長、高校の校長や団体の代表による委員12人と協議が進められる。(委員は18ページ

これは日本のどこにでも見られる「まず役人が決めた後に、有識者の意見を聞いた形にする」典型的な流れですね。委員も波風を立てそうにない構成になっています。

内閣府沖縄総合事務局と沖縄県商工労働部の担当者でたたき台としての原案が出されたときには、県政のトップやメディアの意向を忖度した内容となっているでしょう。マーケット感覚が豊かな市民や企業経営者の意見を反映するシステムが無く、この構造が沖縄版「大艦巨砲主義」を存続させている原因だと思うのです。

『日本市場のゲートウエイ』

なにも東アジア全体のゲートウエイを目指す必要はないし、それを目指しても実現は不可能だ。それなら、ターゲットを絞って戦略を組みなおす必要がある。 すると沖縄は大きな発展のポテンシャル(潜在力)がある事がわかります。なぜなら、沖縄には『日本市場のゲートウエイ』となるOnly oneの優位性があるからです。

21世紀のビジネス環境

1990年代前半から現在(2017年)まで、世界で起きた大きな変化は、距離の壁がなくなり、物流・決済インフラを自前で構築する必要が無く、低資本でビジネスができるようになったことだ。

1.インターネットの普及
2.製造業のファブレス化(工場の無いメーカー) 
3.物流・決済インフラ

環境破壊につながる工場を持たなくてもメーカーになれるし、物流施設や決済システムを構築する必要もない。インターネットの普及で沖縄にいながら世界中でマーケティング活動ができる。

一例をあげれば、アマゾンで販売すれば物流・決済システムも不要となる。商品の『企画・設計・デザイン』部門があれば、中国や東南アジアの工場に委託することで工場をもたなくても製造できる。また、世界の広告費は2017年にはインターネットがテレビを超える見込みだ。このように、ビジネスのコアな業務は、ますます『企画・設計・デザイン』と『インターネット・マーケティング』へと重心が移行している。

従来の発想で沖縄経済の限界をきめるのではなく、21世型のビジネス思考に発想を転換しなければならない。そう思います。

この視点から、沖縄県の産業発展の戦略を企業経営の戦略思考である『3C分析』で考えてみました。
『東アジアのハブ戦略』と『日本市場の玄関戦略』とで比較

沖縄産業の3C分析

 

外的環境

顧客:Customer

競合(Competitor)

自社(Company)

東アジアのハブ

地理的優位性
でNo1になれない

日本企業
アジアの企業
日本の消費者
アジアの消費者

上海、東京、ソウル

△英語、中国語
△ITスキル
△物流の利便性

日本市場の玄関
(ITマーケティング)

日本の最南端
最も近い日本

国内の消費者
(顧客との窓口)

福岡

○日本語
○ITマーケティング
○沖縄ブランド

3C分析で目指すものは「経営資源を集中投下するべき、No1になれる分野を選択する」ことです。しかし、今の『沖縄成長産業戦略』では誰が顧客なのか特定できません。そのため、具体的な活動計画に落とし込むのが難しくなっているのです。
『日本市場の玄関』を目指す場合には、顧客、競合、必要とされるスキルも、より具体的になり取り組みやすくなります。

『日本市場の玄関』を目指す場合の優位性・メリット

●『日本市場への玄関口』
台湾以南の国々にターゲットを絞る。 そうすることで競合となる福岡市に比べて、日本の最南端にある地理的優位性が確かなものになります。
いったん、沖縄が『日本市場への玄関口』としてOnly oneの存在となったとき、中国、韓国企業は競って来沖することになるでしょう。
ターゲットを絞る意味はそこにあるのです。

●「顧客との窓口」になる
どのようなビジネスであれ、顧客にもっとも近いものがそのビジネスを制するようになります。日本市場へのITマーケティング業務を担うことで、「顧客との窓口」となり、サプライチェーンの王様となる。 最終的には、台湾、東南アジアの企業は下請け企業、仕入れ先となるのです。

●「母語がビジネス言語となる」
マーケットが日本となり、必要とされる語学スキルは英語、中国語ではなく日本語となる。 台湾、東南アジアの企業は自社商品を売り込むために、通訳同伴で来沖することになります。その場合の沖縄は、お客様ですからね、強いです。

●「インターネット・マーケティング」がコアスキルとなる
IT技術からインターネットを活用したマーケティング手法にスキルの比重が移動する。それは、文化・芸能やホスピタリティー精神、奇抜な発想など、“ウチナーンチュ”の特徴を発揮できる分野にビジネスの主戦場が移ることを意味しています。

ITビジネスがスキル優位の時代からコンテンツ優位の時代に移り、現在は、革新的アイデアが決定的差を生む時代になっており、まさに、21世紀は“ウチナーンチュ”の特徴が活かせる時代なのです。

●「沖縄ブランド」を活かす
第二、第三の「かりゆしウエア―」をつくっていく。アジアの企業から持ち込まれた商品の中から、可能性のある商品はアジア企業との連携を図りながら沖縄ブランドとして県内で製造してゆく。 このように、アジアからのビジネス案件が集まる沖縄にすることで、裾野の拾い産業振興につながります。「アジア企業のパワー」を取り入れて「沖縄ブランド」を活かすこそことが、『日本市場の玄関戦略』の最終的な目標なのです。

以上、『市民が考える沖縄成長産業戦略 』でした。

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佐藤コロ

小さな会社の雑用係・役員

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